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特集 外科と感染—その基本的対策とPitfall
手術室感染と対策—付:無菌手術室とその考え方
Infection control in the operating room
都築 正和
1
Masakazu TSUZUKI
1
1東京大学医学部中央手術部
pp.617-625
発行日 1973年5月20日
Published Date 1973/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205800
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はじめに
外科手術に際しての合併症として細菌感染が非常に恐れられたのは19世紀中期の頃までであつた.Pasteur(1861)による細菌感染の発見と,Semmelweiss(1848,Wien),Lister(1867,Lon-don)らの努力によつて始められた制腐法(An—tiseptik)によつて手術は安全なものとなり,その後も多くの先覚者の努力によつて各種の無菌法が取り入れられてきた.このようにして,1900年代になると,手術に伴う細菌感染の抑制策は一段落し,手術に際しての問題点は麻酔法,患者管理,循環呼吸動態の研究などに集中された感があつた.しかしこの間にも手術に伴う細菌感染とその対策についてはいくつかの調査と研究が行なわれており,これらの研究によれば,手術後に発生する感染症は5〜15%であつた.第二次大戦前後の抗生物質が発見され実用化された時代にはかなりの感染率の減少がみられたが,その後再び増加して,大体同じレベルになつている1)2).その理由としては,抗生物質耐性菌が発生して次の新種抗生物質の発達をうながし順回過程に入ること,以前には手術不能であつた重症患者にも手術が行なえるように周辺技術が進歩してきたことと,また心臓大血管外科,移殖手術など感染を起こしやすく,一度感染が起こると致命的な結果に終る可能性の大きい大手術が行なわれるようになつたことなどによるものと思われる.
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