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特集 今日の外傷—外傷患者の初診と初療
Ⅳ.胸部外傷
肺肋膜損傷の診断と治療方針
Diagnosis and surgical treatment for lung-pleura injuries
鈴木 一郎
1
Ichiro SUZUKI
1
1公立岩瀬病院
pp.1243-1248
発行日 1971年8月20日
Published Date 1971/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407205415
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はじめに
肺肋膜損傷は,胸部損傷の中でももつとも特徴のある損傷であるのは肺肋膜(胸壁)の解剖学的,生理学的理由による.胸郭を形成する肋骨は,長く細く,容易に破損する.胸郭に外傷が加わるとまずdamageをうける運命にあるのが,この弱く,しかも広い容積をもつた胸郭肋膜および肺であることは説明するまでもない。すなわち鈍性,鋭性いずれでも外力が加わると,肋骨胸郭の破損とそれに伴う肋膜および肺の損傷がおこり,胸郭の破損の軽微な場合でも,胸壁を貫いた鋭性外力は肋膜肺を損傷する.このように胸壁あるいは肋膜,肺の損傷がおこると必然的に肺の換気機能不全が出現し,それを速やかに処理しないと呼吸困難のために受傷者の生命は危険にさらされる.また肺肋膜損傷は,その解剖学的理由から,容易に大出血をおこすことも特徴的で,とくに胸腔内出血は,その頻度と出血の程度が想像を絶することが多く,これによるshockと血腫による肺および心臓大血管の圧迫のため重大な事態がおこりやすい.したがつて肺肋膜損傷の際に出現する肺肋膜周辺の異常な生理学的変化を,速やかにかつ正確に判断し,その状態から直線的に脱出させるため迅速適切な処置を実施することは,胸部損傷の救急処置の基本である.
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