Japanese
English
特集 全身状態とSurgical Risk
甲状腺機能亢進症の併存—とくに甲状腺クリーゼについて
The problems of surglcal treatment for patient associated with hyperthyroidism
降旗 力男
1
,
牧内 正夫
1
,
宮崎 忠昭
1
Rikio FURIHATA
1
1信州大学医学部丸田外科教室
pp.1651-1657
発行日 1969年12月20日
Published Date 1969/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204996
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はじめに
甲状腺機能亢進症の併存がsurgical riskを高める理由の一つは,手術という侵襲によつて,甲状腺クリーゼ(thyroid crisis or storm,以下クリーゼという)をひきおこす危険性があることであろう.周知のごとく,クリーゼは,かつては甲状腺機能亢進症の手術後に発生し,手術死の過半数をしめていた時代もあつたが1)2)3),Plummerらの微量ヨードの投与4)5)6)や,Astwood7)のthiou-racil系薬剤の投与などによつて術前処置が進歩したので,術後クリーゼによる死亡は著しく減少し,現在では甲状腺機能亢進症の手術は他の手術とほとんど変りなく行なわれている8)9)10).しかし,クリーゼは甲状腺機能亢進症の甲状腺腫亜全切除後の他に,別の誘因によつて発生することがある.たとえば,甲状腺機能亢進症の治療が適切に行なわれていないときには,胆石症,虫垂炎,イレウス,抜歯,あるいは帝王切開などの手術が誘因となつて,クリーゼの発生することが報告されている3)11)12)13)14).
甲状腺機能亢進症の合併があらかじめ診断され,その管理が適当に行なわれておれば,本症の合併は外科臨床上ほとんど問題にならない.しかし本症の合併に気づかなかつたり,あるいは外傷や緊急手術など止むを得ない事情のもとでは,クリーゼの発生する危険性がある.
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