Japanese
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特集 臨床麻酔の問題点
大量輸血の注意
Prevention of complications following massive blood transfusion
高折 益彦
1
Masuhiko TAKAORI
1
1大阪大学医学部麻酔科
pp.659-668
発行日 1969年5月20日
Published Date 1969/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204849
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はじめに
最近における麻酔学・外科学の進歩とともに,外科手術の種類は対症的なものより根治的なものが急速に増加し,それにつれて一つの手術における手術部位も一般に拡大の傾向を示し,長時間におよび徹底的な外科治療(operative treatment)が行なわれている.その代表的なものに,癌腫摘除ならびに拡大広範囲リンパ腺廓清術・心臓弁膜置換術等がある.現今のこれら外科的手術が行ない得るにいたったのは,輪血学が進歩し,大量の出血に対してそれを補い循環を正常に保持しうることに負うところが大きい.大量輸血をしなければならない状態,すなわち大出血のあつた場合,患者の循環血液量は減少していて,全身への血液潅流も低下している.この状態の程度によつては,いわゆる出血性ショック症状を呈し,さらに時間的経過とともに不可逆性ショックへと患者を導入する.したがつて,これを避けるために速やかに大量の輸血を行なわねばならないし,また,よりよき循環動態を得るための考慮もはらわなければならない.このような技術的な面にも現在なおいくつかの問題点を残している.また,大量出血,それに対する大量輸血は,失われたものを補うという点については,必ずしも満足すべき状態のものではない.たとえば,正常血液中に含まれる凝固因子が,保存血ではほとんど消失していたり,また減少している.また,冷却血液の注入によつて体温が低下する等の合併症もみとめられる.
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