実地臨床手技のエッセンス 輸血と全身管理
大量輸血をめぐる諸問題
山崎 順啓
1
Nobuhiro Yamazaki
1
1東京慈恵会医科大学輸血部
pp.109-112
発行日 1979年2月10日
Published Date 1979/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205992
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Ⅰ.大量輸血を行なうにあたって
現在輸血に関する背景的学問の進歩と輸血法の多様化にともない,かつては考えられなかったほど大量の血液が治療上使用されるにいたった。もちろん,こうした現象はたんに輸血の問題というよりむしろ医療全体の総合的傾向につながるものといえよう。すなわち,心臓外科領域における人工心肺の使用,内科領域における血液成分療法の普及人工腎臓の使用等々各科治療分野における輸血のウェイトはきわめて大きくなりつつある。かつて一部で行なわれていたone bottle transfusion(少量の出血に際して行なう一本200mlだけの輸血)やcosmetic tvansfusion (他に手段がないからという理由だけで行なう不必要なスタンドプレイとしての輸血)は影をひそめたものの逆に現在のような大量の血液が消費されることがはたして本当に好ましい現象であり輸血の進歩であるといいうるであろうか。たしかにある面では肯定できる現象であり医学のレベルアップであるといいうるかも知れない。しかしよく考えなければならないことは,第1に血液は人工的につくりえないもので人間の善意によって提供される,いわば有限の資源であるということと,第2に輸血は,ときにある程度副作用(危険性)が伴なうものであるという二つの重要な事柄である。
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