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特集 木本誠二教授退官記念特集
心臓移植
Heart transplantation
上井 巌
1
,
中村 和雄
1
,
伊藤 健二
1
,
長谷川 嗣夫
1
,
古瀬 彰
1
,
小藤田 敬己
1
,
三枝 正裕
1
Iwao UEI
1
1東京大学胸部外科教室
pp.965-969
発行日 1968年6月10日
Published Date 1968/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204622
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はじめに
1967年12月3日,南ア連邦のBannardらにはじまる一連の6例におよぶ同種心臓移植臨床例が試みられ,現在そのうち1例の生存者があり,それが今後どのような経過をたどるかは全く不明であるが,このように早く臨床例が行なわれたことはわれわれ心臓移植の実験的研究に従事していた者たちはもちろん全世界の人々に少なからぬ驚愕を与えた.国民感情,社会機構,宗教的伝統などからあるいは多少行ないやすい環境にあつたとしても世界で最初に同種心臓移植の臨床例を試みるということはかなりの批判は免れ得ないところであり、確固たる信念と勇気とが必要であつて,ここに率直な敬意を表したい.心臓移植の研究はすでに今世紀はじめCarrel1)らによつて血管吻合技術の開発が主な目的で仔犬の心臓を成犬の頸部に移植する異所性の心臓移植を行ない移植心が2時間の摶動をつづけたという記録が示されている.
のちにMannら2)はこの方法を改良し発表したが,いわゆるMannの方法といわれ,頸部異所性心臓移植の実験モデルとして広く応用されるに至つた.一方心臓外科の発達にともない心血流遮断の方法が進歩するにつれて同所性心臓移植が可能になり1953年Neptune3)は犬を用い低体温法(21〜24℃)下で同所性同種心肺合併移植の実験を試み最長6時間の生存をみた.
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