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特集 救急患者の取扱い方
肝不全の救急処置
Treatment of hepatic insufficiency
上野 幸久
1,2
Yukihisa UENO
1,2
1自衛隊中央病院内科
2東大
pp.958-961
発行日 1967年7月20日
Published Date 1967/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204351
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はじめに
外科領域において肝不全をきたすのはどんな場合が考えられるかというと,第1には手術前にすでにある程度の肝臓の器質的障害(肝炎,肝硬変,胆管肝炎)などが存在していて,手術という侵襲によつてそれが悪化し,重篤な経過をたどつて肝不全におちいつた場合である.第2には手術のために輸血し,それによつて血清肝炎に罹患し,それが劇症化した場合である.第3には手術時の麻酔に使用した薬剤,とくにハローセンなど,あるいは原病の治療のために投与した諸種薬剤によつて,時としていちじるしい肝障害をきたすことがある.以上は肝障害が高度であるため肝機能がいちじるしく低下した状態で,本来の意味での肝不全である.第4には以上と多少おもむきを異にする肝脳症候群portal systemic encephalcpathyがある.これは意識障害をくりかえす猪瀬型肝硬変にみられるが,外科と関係が深いのは門脈圧亢進症に対する門脈下大静脈吻合術後におこるEck症候群である.この際は肝実質の障害そのものは前3者ほどいちじるしくはないが,意識障害など肝不全に特有な症状を呈するものである.このように肝不全と肝性昏睡とは必ずしも同義的ではないが,両者の対策はほぼ同一と考えて差支えない.本稿においては,外科医諸氏が対処しなければならないこれらいろいろの原因による肝不全ないし肝性昏睡に対し,われわれがとつている救急処置を述べて参考に供したい.
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