臨床メモ
"術後腸管癒着症"と"むかつき"の治療
弓削 静彦
1,2
1宮崎県立日南病院
2久留米大学
pp.806
発行日 1967年6月20日
Published Date 1967/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204327
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日常診療においてわたくしがつね日頃,自分にいいきかせて注意していることのうちから,ひとつふたつひろいあげることにいたします.もちろんご経験の多い読者のみなさんには,お笑い草かもしれませんが‥‥‥
(i)術後腸管癒着症は臨床外科医にとつて重要な問題のひとつであり,多くの研究が積み重ねられてきた.とくに癒着防止剤としてとりあげられた薬剤は枚挙にいとまないほどであるが,現在のところ,癒着防止の〈決め手〉になるものはない.わたくしどもは10年近くこの問題について研究してきたが,現在1%コンドロイチン硫酸の腹腔内注入と副腎皮質ホルモンの併用をルーチンの方法としている.ところで癒着症患者の訴えは,癒着の広さや強さとは必ずしも一致しないことは,この種の患者を取扱つた人なら誰れでも経験ずみのことであろう.また,癒着症患者の治療にあたつては,精神身体医学的なことも十分考慮に入れて治療すべきことも周知の事実である.多くの癒着症患者をとりあつかつていると,便秘,消化性潰瘍様の症状,腹部膨満感などを主訴とし,術後腸管癒着症の診断で数次にわたり手術を受けたが症状好転せずというような患者がある.
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