連載 三治郎の世界・5
僕の窓から
南川 三治郎
pp.331
発行日 1998年5月10日
Published Date 1998/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900815
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僕が初めてパリの地を踏んだのは,1969年のことである.それまで雑誌社の写真部員を3年間務め,フリーになる前に外国に行ってちょっと暮らして,見聞を広めようとの心意気であった.フランス語も英語もまったく話せず,東西南北もわからない中での無謀な計画であった.しかし,パリの爽やかなエレガンスあふれる空気は僕を魅了し,その虜にしてしまった.それは今日もまだ続いている.
また,パリは僕にカルチャー・ショックを与えた.ヨーロッパの縦横に入り組み,交差しあう歴史に圧倒されてしまったというのが正直な印象であった.しかし,その難解な歴史を少しずつひもといていくと,そこには華麗な王朝を基本とする文化が介在し,花開いていることに気づいた.そして,それらの宮廷文化を理解するにはもっと歴史を勉強しなければ……と思いつつ,いつの間にか四半世紀を過ぎてしまった.
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