特集 腫瘍の外科
研究と報告
妊娠に合併せる褐色細胞腫の1治験例
柴沼 達郎
1
,
宮本 胤彦
2
1小田原市医療法人山近病院
2東京慈恵会医科大学阿部内科
pp.1118-1124
発行日 1966年8月20日
Published Date 1966/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204065
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1886年Fränkel1)は,初めて褐色細胞腫の1剖検例を発表し,1929年,Pincoffs2)は,初めて褐色細胞腫を術前に正しく診断することに成功した.それいらい本症は比較的まれな疾患とされていたが,1945年Rothら3)はhistamine testを1949年Longinoら4)はregitine testをその診断に導入し,さらに1950年Engel5)が本症の診断における尿中catecholamine定量の有用性を提唱していらい,本症の診断は容易となり,欧米における症例も実に800例を数えるに至つたのである.いつぽうわが国においては,1942年村上6)が初めて報告してから1962年までに,わずか15例の報告をみるに過ぎなかつたが,それ以後年年増加の傾向を示し,現在では40例に近い報告をみている.しかし,本症の手術による根治率はいまなお低いと言わねばならない.その原因としては,第1に本腫瘍が,約4%は多発性7)で,約10%は異所性8)のものが存在する事実をあげることができる.Clausen9)によると,一側副腎に腫瘍一コを証明しえた症例は52%と述べでいるが,本症手術の困難性の一面を物語るものである.第2に本症の手術死亡率の高いことがあげられる.
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