特集 腫瘍の外科
研究と報告
肺癌症例の経験(とくに脳転移による発症について)
高橋 希一
1
,
阿部 力哉
1
1東北大学医学部葛西外科教室
pp.1057-1062
発行日 1966年8月20日
Published Date 1966/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204053
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悪性腫瘍症例では,原発巣が症状上からはまだ潜伏性の時期に,遠隔部の転移巣に由来する症状をもつて発症するようなことは珍らしくなく,ことに肺癌ではそのような例は日常診療上少なからず見受けられている.癌の治療対策として,《まだ転移の起こらぬうちに,そして原発巣が可及的に小さなうちに》これを処置することを根本方針とする,いわゆる早期治療の立場からすれば,このような,転移が起こつて後に初めて発病するような例は,はなはだ手遅れな事態だとされるであろう.しかし肺癌の場合には早期発見,早期治療ということがいかに難しいことであり,おのずからなる限度のあることを認めざるをえないのが現状であると思われる.
われわれは東北大の桂,葛西外科教室で取り扱つた肺癌73症例について治療現状,とくに治療成績を阻害するものの一因について少しく考察したので,ここに報告する.
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