雑感
外科医と産婦人科医とのあいだ
本田 三郎
pp.100
発行日 1966年1月20日
Published Date 1966/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203872
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私達の医師会には,毎月,M・G・D集談会という実地医家らしい勉強会があります.そこで,あれこれ饒舌し合つている中には,お互いに気心もわかり,助け合いの気風も生まれてきます.M先生は新鋭の外科医ですが,私の国立病院勤務中にインターン生として過したこともあり,同じ医師会に入つてからは,集談会を通じて一層仲良くなり,有無相通じるようになつて,有無をいわさず引つ張り出したり出されたりしています.そんな例を二つ.
その1."ひとつ,経腕ダグラス窩穿刺をやつてみせて下さい" と頼まれたのが,64歳の老婦人です.ある内科医から引きっいだ患者で,数日来,下腹痛と下痢があり,それが主訴です.全身症状は少ないが,悪心,食慾不振と共に,発熱38℃前後,白血球数21,000,回盲部に軽度の圧痛とデファンスがある.直腸診で痛みを訴える.老人性虫垂炎と思うが,経過と白血球数とに多少ギャッフ。を感じるし,ダグラス窩貯溜があるらしい.経膣ダグラス窩穿刺を試みたらと思うので,先生のやり方を見せてほしい,というわけです.膣鏡と単鉤鉗子と穿刺針を用意し,型のごとく穿刺すると,少量の汚繊混濁した膿汁が採れてきた.虫垂に穿孔があるのは疑いないと開腹すると,その通りで,先端の部分の3分の1が化儂,破潰している.手術,経過大過なし.
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