グラフ 外科病理アトラス
グラフ解説
急性局所性腸炎
石倉 肇
1
1北海道岩内町石倉外科医院
pp.89-92
発行日 1966年1月20日
Published Date 1966/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203866
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北海道岩内地方で多発する急性局所性腸炎は,臨床的にはCrohn病急性期と極似するが,組織学的には肉芽腫をつくらず一過性滲出炎を経て急速に治癒する.その疫学的見地や組織学的特徴からAnisakis性腸炎を濃厚に疑わしめるが,まだ病原探究に必要な実験を行ない得る段階に至らないので確証はない.この局地発生性の本症をEnteritis regicnalis exsudativa acutaと称したい.本症は臨床症状はもとより,病理組織像においてもCrohn病急性期の研究にきわめて好箇の資料を提供し得るものである.
本症は12〜2月の厳冬期に多発し,すけそう鱈の子を喰べたものに多い.腹部劇痛・悪心・嘔吐・下痢で発症.急性重炎と極似する.発熱は軽く,腹壁緊張少なく,垂炎より腹部所見は軽いが白血球増多は強い,血色素係数は低下し,重症ではプトロンビン時間の延長,舌炎,皮膚乾燥,粘液便,血便もある.垂炎と異なり圧痛部位もまちまちで,その範囲は比較的広く,膨化あるいは硬化局所の抵抗を時々触れ得る.前記症状とX線像で確診される.すなわち本症では小腸バリウム停滞長く,分節状に進行し病変口側の膨化あり,罹患部腸壁粘膜の鋸歯状・蜂窩状変化があり,局所が終末回腸に近いと特有なString sign桿棒状を示し,粘膜は"Shaggy"となる.
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