薬剤の知識
抗生物質使用上の注意(3)
真下 啓明
1
1北海道大学医学部第2内科
pp.1584-1586
発行日 1965年11月20日
Published Date 1965/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203820
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Ⅰ.抗生物質療法の副現象
抗生物質療法を行なつた場合,抗生物質本来の作用である抗菌作用により,正常腸内菌叢その他に変動を与えることがある.とくに経口投与で難吸収性であるStreptomycin,Kanamycin,Neom-cycinなどで著しい.この場合当然感受性菌の減少,そして耐性菌の残存の結果,比較的耐性菌増加の状態になる,第1,2図はFradiomy cinl3g/day経口投与時のColi-group細菌およびEnterococcusの変動である.Candidaはこの場合ほとんど影響されずむしろ増加傾向がある.そして注目すべきことはこの際血中Cholesterolの低下をみることである.この理由はなお完全には説明しえないところであるが,一つにはFradiomycinにょる腸粘膜の障害が考えられる.しかし,われわれの研究においては動物実験では200mg/kgの投与でも腸粘膜に組織学的変化を認めていない.またウサギ,あるいはヒトで131I-Triolein吸収試験,d-Xylose吸収試験の結果からも吸収障害は証明されない.そこで腸内細菌の関与が問題になり,正常状態でCholesterolあらるいはBile acidsの腸肝循環が行なわれており,腸内細菌叢の変動が何らかの形で,この腸肝循環を障害した可能性が考えられる.
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