雑感
家庭医の立場から
秋月 源二
pp.1457
発行日 1965年10月20日
Published Date 1965/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203796
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開業して,1人で無床の家庭医として診療に従事していると,いろいろ考えさせられる.まず日進月歩の医学から取残されて,だんだん頭も技術も古くなつていく心配である.それはそれとして,(1)胃痙彎で往診した小母さん,複合ブスコパン静注で痛みはとまつた.翌日発熱,黄疸.定型的胆石胆嚢炎.大病院の外科に入院,30個以上の石と胆嚢切除して1ヵ月後帰宅,(2)午前0時劇しい腰痛で往診した若者.とりあえず鎮痛注射.血尿を証明,尿路結石と診断,大病院の泌尿科に人院,(3)腹痛で往診した老婆.下腹部に小児頭大の卵巣嚢腫.産婦人科に入院手術,全治退院(4)上腹部によく動く腫瘤のふれるお婆さん.胃癌,入院胃切除退院(5)数年前から脚気として他の医師でB1注数年.バセドウ.大病院外科手術.(6)とつぜん劇しい下腹痛の主婦,一時はショック状態,まもなく回復.外妊破裂,ただちに大病院入院手術.
病名らしい病名のつく患者はだいたい入院手術の例が多い.都会では1人の医師がはじめから最後まで取扱う症例はきわめて少ない.内科から内科に転医したり,さらに入院すれば,検査科,X線科,麻酔科,外科等複数の医師の関係することが多いし,またそうしなければ完全な治療が実施できなくなつている.組織診療,複数診療が能率をあげる.
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