他科の意見
泌尿器科から外科への希望(2)
仁平 寛巳
1
1山口大学医学部泌尿器科
pp.1102-1103
発行日 1965年8月20日
Published Date 1965/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203714
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泌尿器科医にとつては非常に重要な症状であるのに,他科の人がそれ程に考えていないものの一つに血尿がある.特に疼痛,発熱,浮腫などの全身症状や尿意頻数,排尿痛などの排尿異常もない,すなわち他の自覚症状を全く伴わず,しかも誘因と思われるものもなくてある日突然に出現する肉眼的血尿である.これは無症候性血尿と称して,40歳以上の人に現われた場合は尿路悪性腫瘍の発生を警告する最も重要な初発症状であるが,医学的知識のない一般の人はもちろんのこと,お医者さんでもそれ程重大な徴候とは考えていないのではないかと時々疑問に思うことがある.それというのも膀胱癌などでたいていは1年前から,ひどいのになると2〜3年前からこのような血尿が出没して,その度に止血剤の治療を受けていたという病歴によく接する.思うにこの種の血尿は,大部分の場合安静にしているだけで数日から週余で自然に消失するものであるから,患者のみならずお医者さん自身もまあ大したものではなかつたと考えてしまうのではなかろうか.しかしながら血尿といえば血痰,吐血,血便などと全く同じ性質の症状であるのに,何故に尿路の場合に限つて出血の原因には無関心で対症的治療に傾くのか,この点が泌尿器科医にとつては不思議でたまらないのである.
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