交見室
泌尿器科温故知新
小野 芳啓
1
1群馬県立がんセンター泌尿器科
pp.555
発行日 1999年6月20日
Published Date 1999/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902698
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本誌に掲載されました症例報告「自然破裂した陰嚢水瘤」(森山浩之・他,臨泌53:243-245,1999)を読み,以前2,3の症例報告を目にした記憶がありますので,確認できたものをご紹介いたします。それは東京帝国大学副手,東京警察病院皮膚科泌尿器科の谷奥喜平先生によるものです1)。
時は1939年10月25日午前2時,43歳男性が「背位にて水腫を両上腿に挟み少し背伸びしたるに突然有側鼠径部に不快の牽引感と何か引裂ける感じを覚え」た後,水腫の軟化と鷲卵大から手拳大への縮小と陰嚢の変色を認め,翌日泌尿器科を受診し手術にて血腫と鞘膜の穿孔を認め,Winketmann氏法にて処し14日目に全治退院した,とのことです。また,本邦においては(当時)いまだ本症の報告はなく,西洋では1759年から1907年までに40例,1930年までに63例の報告があるがそれ以降は報告がなくなり,その理由として,現在(当時)では根治手術が施行されるが,(当時よりも)昔は主として穿刺術や注入療法など姑息的療法が行われたため固有鞘膜の病的変化,抵抗力減少が発生することによる,との意見を引用しております。以上をふまえ,「本症に対する記憶を新たにせんと考え」,臨床症状,病理解剖,原因,診断,治療法などについて詳説されております。
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