外来の治療 実地家のための外来治療・1
一次切除・縫合術ならびに創の手術的清掃法
出月 三郎
pp.617-619
発行日 1965年5月20日
Published Date 1965/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203606
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はじめに
外科を開業している医師の外来を訪れる患者は,普通生命の危険をともなうものは比較的少ない(しかし近時交通事故などによる救急治療を必要とする重症患者が逐次増加しつつある).それゆえ外来診療は一般に軽視され勝ちである.しかし外来診療の対象になる患者は,その絶対数においてまた患者に与える苦痛において,決して軽視すべきでない.日本の学会などでは,外来診療の対象となるような傷病はまつたく問題にされない.これを問題にするのは学者の恥辱くらいに考えている人もなきにしもあらずである.私がかつてドイツに留学していた時の所見であるが,1936年ドイツ外科学会の席上Lexer教授が"Allgemeinen-fektion"の宿題報告をした.これにたいしてSanerbruch, Payer, Kirschner, Löhrその他の教授連が追加討論をしたのであるが,その状況を見るとたとえば熱性膿瘍にたいしある人は十分に大きい切開を行なうと云い,ある人は小さなLochinzisionが良いと云うように,日常の小外科の治療についても,極めて真面目に熱心に討論するのであつた.これは日本外科学会ではなかなか見られない光景であつて,私には不思議に思えた.それと同時に小外科といえども決してゆるがせにしない彼の国の教授連の真摯の態度に強く心を打たれたのであつた.
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