特集 外科と保険診療
診療報酬明細書よりみた外科保険診療
松井 文英
1
1東京基金
pp.1611-1614
発行日 1964年12月20日
Published Date 1964/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203489
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毎月東京基金に請求される社会保険診療の明細書の中からときに問題となつた症例より保険診療における外科的疾患について手術,抗生物質,輸液,輸血等の内容を紹介し,さらに日常よく見られる疾病についていろいろ検討を加えて見たい.ここに紹介した10例の手術例は何れも大学病院,あるいは綜合大病院から請求された症例ですべて重症,難症例でありそのほとんどが死亡しているものである.その1カ月の診療費も33万円から65万円といつた高額におよんでいる.もちろんこれらの症例は全体としては極く少数例であるが,いずれもその手術適応.術中の不慮の出来事,あるいは術後の合併症,さらには第2回,第3回と手術が反復行なわれ増々重症,難症の度が加わり診療内容は専ら救命的治療に終始している.症例の中で腸管癒着症といつたごくありふれた症例があるが当初の虫垂炎手術から始まつてなんと11回の開腹手術が行なわれている.また腎膿瘍の症例では腎切開→腎剔→出血→開腹→死亡といつた例である.僧帽弁狭窄の例は術中体外循環の装置が故障して低酸素血症を残しそれから出血傾向→血尿,さらに縫合不全を起して衰弱死亡している.直腸癌の例は腫瘍剔出不能で部分切除を行ない組織間液の漏出ひどく前例と同じく衰弱死亡している.食道癌の例は術後縫合不全,自然気胸→肺合併症→死亡.胃穿孔性腹膜炎の例は術中総輸胆管を損傷し,引続き合併症を起して死亡している.
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