Japanese
English
特集 脳・頸部・胸部の症例
閉塞性大動脈炎—脈なし病の病理
Occlusive Aortitis.:The Entity of Pulseless Disease
稲田 潔
1
,
江草 重実
1
,
林 力
2
,
当山 雄紀
3
Kiyoshi Inada
1
,
S. Egusa
1
,
T. Hayashi
2
,
Y. Toyama
3
1岡山大学医学部砂田外科
2岡山大学医学部小坂内科
3岡山大学医学部病理学教室
pp.1175-1181
発行日 1964年9月20日
Published Date 1964/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203414
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はじめに
大動脈縮窄症は欧米では日常比較的しばしばみる重要な先天性大血管奇形であるが,本邦では稀で,しかもその発生部位が左鎖骨下動脈直下のいわゆる定型的なもの(isthmictype)よりむしろ他の部位に発生する異型のもの(subisthmic type)が多いことはよく知られている1).しかもこれらのうちには大動脈弓症候群を合併し,脈なし病類似の所見を呈するものが少なくなく,両者の間に種々の程度の移行型の存在することが明らかとなつてきた.著者らは数年前より両疾患は同じ範疇にいれるべきことを主張してきた2)3)4).すなわち異型大動脈縮窄症の多くは脈なし病同様後天性の動脈炎により発生するもので,ただ主病変の位置が異るため一見相反した臨床症状を呈するにすぎないことを主張してきた.
最近29歳の女子で,胸部下行大動脈より腹部大動脈にわたる高度の縮窄に,大動脈弓分枝の閉塞性病変を合併する例で大動脈のbypass移植後死亡し,剖検により詳細な病理学的検査を行いえた1例を経験したが,本例はわれわれの主張を立証する好個の症例であり,またこのような例の剖検報告をみないので詳細を述べ一般の参考に供したい.
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