Japanese
English
論説
経腰的腹部大動脈造影の診断的価値と合併症
Diagnostic significance and complication of the translumbar aortography
稲田 潔
1
,
和気 秀文
1
Kiyoshi INADA
1
1岡山大学医学部砂田外科教室
pp.888-896
発行日 1964年7月20日
Published Date 1964/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203371
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
腹部大動脈造影は,腹部大動脈および下肢動脈の閉塞性疾患,動脈瘤,縮窄症,腎血管性高血圧など各種の血管性疾患の診断,治療法の選定のほか腎疾患,腹部腫瘤の鑑別などに重要かつ有力な検査法として,欧米では各方面で日常広く用いられているが,本邦ではまだ一般にあまり普及していない.
腹部大動脈造影法としては現在,1)経腰的穿刺法(直接法)と,2)逆行性カテーテル法(間接法)の2つが行なわれている.前者は1929年dos Sa-ntosによりはじめられたもので,血管外科の発展につれ下肢動脈の閉塞性疾患にさいしてはroutineの検査法として普及し,最近腎血管性高血圧が一般の注目をひくようになり,腎動脈造影法としての価値がクローズアップされ,その応用範囲がますます拡大されてきた.逆行性カテーテル法としては,Seldlinger (1953)1)によりはじめられた経皮的に大腿動脈を穿刺し,逆行性に細いカテーテルを挿入して行なう方法が,とくに内科医,放射線科医などに好んで用いられている.本法は前者に比べると操作がやや複雑,また高価かつ特殊の装置を必要とするため本邦では従来ほとんど行なわれていなかつたが,最近ようやく2,3の施設より使用経験が報告されている2)3)4).両法はそれぞれ特徴があり、その優劣はにわかには断定しえないが,操作の簡単という点では前者がはるかにまさつていることはいうまでもない.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.