Japanese
English
論説
腹部外傷について—特に診断を中心として
Studies on the diagnosis of abdominal trauma
飯塚 積
1
1東京都済生会中央病院外科
pp.899-906
発行日 1963年7月20日
Published Date 1963/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203117
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交通,産業およびスポーツ災害の増加に伴つて腹部外傷も年々急増の一途をたどつている.
しかしながら頭部,胸部および四肢の外傷に比較して腹部の損傷が少ない1)2)のは,刑事的事件を除くと腹部臓器が身体の中央にあつて衣服で被われ,しかも脊椎,肋骨および骨盤などから保護されているためであろう.このような腹部外傷の発生頻度が低いにも拘らず,重要臓器が損傷されるためにその死亡率は著しく高く1)3),また最近になつて重症例の増加が目立つてきている.これは交通災害にしてもスポーツ災害にしても特にスピード化されてきたことが第一の原因で,また産業災害では重工業の規模の拡大とこれに伴つた技術未熟者の増加が原因と考えられる.本誌編集部から腹部外傷について依頼をうけたので,特に診断を中心として取上げてみたい.これは救急手術の適応となるような損傷であつても次に述べる種々の障害があつて損傷の部位と程度を判定することがなかなかむずかしいためである.閉鎖性外傷では当時の受傷機転について詳しい過程を説明してくれることが少なく,また腹壁の損傷と内臓の損傷とはその程度が全く一致しないことが多く.したがつて一見して症状の強く出ている頭部,胸部および四肢の外傷を合併していると,その症状に蔽い隠されて腹部の損傷を看過すこともある.
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