保険の話
保険診療の問題について(5-Ⅱ)
近藤 芳朗
1,2
1東京メリヤス健康保険組合診療所
2東大医学部
pp.825-827
発行日 1963年6月20日
Published Date 1963/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203109
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Ⅳ.医療と教育の現物給付
前章で医師以外の第三者は医療そのものの現物としての給付は医療の本質上できない.そしてそれを可能にするには第三者が施設と医師を丸抱えにせねばできないと述べた,現実に施行されている保険医療機関と保険医は自ら首をさしのべて保険者に,医療という城を明け渡したという姿である.自らの自由をしばられた奴隷医という表現は決してオーバではない.しかし,この「自ら」というのが曲者である.医療担当義務だけあつて,それに対する権利は何一つ保障されていない.よく,教育も医療と同じく国民にとつて,不可欠・公的なものであるから,義務教育と同じく医療も義務医療という風に対比して,医療公営・国営を論ずる人がいる.国立・公立の教育は小学校から大学まで確かに現物給付である.その代り施設・運営費は凡て国費公費であり,教育者,学者の身分は公務員で丸抱えである.医療では国立・公立病院もこの方式である.ただし,私的医療施設は私立大学付属病院といえども保険医療機関に指定されるときには,私財をもつて賄つた施設を無料で提供し,而も保険医としては丸抱えとなつたための何等の給与はない.ただ許されているのは出来高払いのその日暮しの労賃を頂いているにすぎない.而も約2カ月おくれで,つくつた商品さえ値切られて.よく大会社の下請工場にたとえられる.この仕組の狂い方の根本原因は何か?
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