保険の話
社会保険審査員にもの申す—この上ない認識不足
岩本 正
1
1仙台市岩本病院
pp.770
発行日 1963年6月20日
Published Date 1963/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203097
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われわれが実際に経験した,社会保険の審査員の審査が不都合であつたと考えられる数症例を報告する.症例1,猟銃弾をうちこまれた患者の散弾摘出術を数度にわたつておこなつたところ,何ゆえに銃弾摘出を数度おこなつたかといつて請求書をかえしてきた.症例2,重症ショックをともなつた骨盤骨折患者に,輸血4000cc程をおこなつた.これはもちろん,血圧測定,一般血液検査(われわれの所では救急室において,乾燥二重修酸塩を加えた小試験管に血液を採り,赤血球,白血球,血色素濃度,ヘマトクリット値,血漿蛋白濃度を一度に検査する),および尿検査などを経時的,連続的におこなつて,それらを指標として輸血をおこなつたものである.これに対して審査員は,輸血が多すぎるといつて請求書をかえてきた.症例3,その翌日に殆んど同様に重篤な骨盤骨折患者がきたので,また請求書をかえされると,輸血料だけでなくて,おこなわれたその他の全部の処置料の支払いがさらに数カ月おくれることになるので,安心して輸血ができないから,審査員の誰かに現場にきてもらつて,輸血量を決めてくれるように電話で頼んだ.もちろん来てはくれなかつた.症例4,上腕骨の開放骨折患者に閉鎖循環式全麻をかけて手術をおこなつた.それに対してかえしてよこした請求書にいわく,「全麻は不可,腰麻ではいかが」.われわれは自らの目をうたがつた.
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