学会印象記 第16回日本医学会総会印象記
脳外科領域
大野 恒男
1
1関東労災病院脳神経外科
pp.672-674
発行日 1963年5月20日
Published Date 1963/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203084
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
第16回日本医学会総会は,講演題目や演者の選択が適切で,外国から多数の学者も招待され,大変に盛会であつた.多くの会場では参会者が場内に入りきれず,また通路にまでしやがんで聴いていた.その上大阪市もご多分にもれず甚だしい交通難で,やつとタクシーを拾つても目的の会場につくのにかなりの時間を要し、1つの会場から他の会場へ興味ある問題を追つて移動することが困難だつたのは残念である.
4月1日のK会場は,Dr.W.Penfieldの後継者として著明なProf.T.Rasmussenの「前頭葉癲癇の外科治療」という特別講演より始つた.Penfield以来の業績の総括であり,薬物療法で制禦し得ない非腫瘍性の前頭葉癲癇183例の術後遠隔成績の発表であつた.しかもこの症例の過半数が出生後の外傷に起因しているということからしても,現在増加の一途にある本邦の脳外傷患者の治療の上に、非常に有意義な講演であつた,治療成績検討例は168例で,そのうち40%は10年以上観察されている.そして完全治癒とみなし得る症例は約1/3,発作傾向の著しい減少をみた症例はやはり1/3におよんでおり,しかも社会適応性の満足できる改善を示したものは全症例の2/3であるという優秀な成績は,私達に非常に大きな勇気と希望とを与えてくれるものと思う.手術的切除後の脳の瘢痕組織が再び癲癇源となるという考え方は,どうやら捨ててもよさそうである.
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.