特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅰ)
虫垂炎
小原 辰三
1
1国立東京第一病院
pp.497-500
発行日 1962年6月20日
Published Date 1962/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202906
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日常診療する疾患のうちで,急性虫垂炎は頻度の多いものの一つである.この疾患の診療については,今まで機会ある毎に,その道の大家先輩から詳細に報告がなされつくされているということが出来る.このような疾患について,なお本誌のとりあげたわけは何故であろうか.急性虫垂炎ほど診断がやさしくつけられるものも少く,またその治療も早期手術によつて,極めて簡単に根治出来るものはないといえる.しかし,典型的な急性虫垂炎の場合には全く成書の通りであるが,毎常この典型的な虫垂炎にのみ遭遇するわけでもなく,また手術あるいはその術後の経過も型通りにいく場合のみであるとは限らない.従つて,自分が経験した症例のみでなく,他人が経験した症例について,その実情をきくことは,自分の経験をより豊富にすることによつて,今後の診療上に役立たすことが出来る.殊に他人の失敗例について,知つておくことは自分が再びその失敗を重ねないという点で,甚だ有意義のことと考える.
このような意味で私共の病院で,最近に取扱つた症例について2,3検討を加えて,反省の資とすると共に,読者の参考としたい.
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