Japanese
English
綜説
無胃性悪性貧血
Pernicious anemia of agastric
友田 正信
1
,
有吉 巍
1
Masanobu TOMODA
1
,
Takeshi ARIYOSHI
1
1九州大学医学部友田外科教室
pp.333-339
発行日 1962年5月20日
Published Date 1962/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202885
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Ⅰ.緒言
輓近医学の進歩に伴い,血液疾患についても外科的処置によつて初めて根治せしめ得るに至つたものが少なくないが,しかしまたその反面外科手術は無胃性貧血という特殊疾患を作り出した.もとより胃機能不全と貧血との関連はFenwick以来注意されていたが,Deganello,Moynihan等による胃全摘後貧血発生の報告,Minst a.Murphyによる悪性貧血に対する肝臓療法の発見,Castle等による有名な内外因子説の提唱,Sturgis等による悪性貧血に対する胃腑療法の創始等によりその関係は一応体系づけられ,次でMorawitz1)により胃切除後各種性状の貧血のみられる事実が報告され,Agastrische Anämienの名称の下に広く一般の関心をよぶに至つた.しかしその後多数学者による研究によつてもこの貧血の性状ないし本態に関しては統一性が認められず,なおこの貧血に対しては漠然とした未解決の貧血症という観念が残つていた.
私どもの教室においては十数年来多数の胃全摘および胃切除手術を行い,その術後生体代謝に関する胃の生理的意義を研究して来たが2),幾多興味ある知見を得,就中悪性貧血の一応は少ないとせられていた日本人においても無胃性悪性貧血例の発生を初めて確証したので,これに関する研究経過の一端を述べてみたい.
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