増刊号 Common Disease 200の治療戦略
血液・造血臓器疾患
悪性貧血
下平 滋隆
1
,
降旗 謙一
2
1信州大学医学部第2内科
2信州大学医学部臨床検査医学
pp.332-334
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904107
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疾患概念と病態
DNA合成障害に基づく貧血を巨赤芽球性貧血といい,ビタミンB12(VB12)または葉酸の欠乏が主な原因となる.VB12の吸収には胃粘膜の壁細胞より分泌される内因子が必要で,その分泌不全のためVB12が欠乏し発症する巨赤芽球性貧血を悪性貧血という1).悪性貧血は遺伝的あるいは自己免疫的機序による胃粘膜の高度萎縮が成因となっており,抗内因子抗体や抗壁細胞抗体が証明されることが多い.胃粘膜の萎縮は胃底部から胃体上部において高度にみられ,組織学的に壁細胞の減少または消失,リンパ球および形質細胞の浸潤を認める.北欧に多く,本邦での症例は少ない.
巨赤芽球性貧血を呈するVB12および葉酸欠乏の比較を表1に示す.主要病因として,前者では悪性貧血以外に胃全摘の既往のある患者や盲管症候群などVB12の吸収障害による欠乏症があり,後者では摂取不足,吸収障害,葉酸代謝拮抗剤投与などが考えられる.悪性貧血に特徴的な臨床所見として,舌乳頭萎縮,舌の発赤(Hunter舌炎),亜急性連合性脊髄変性症と呼ばれる神経障害がある.また,胃癌,橋本病の合併頻度が高く注意が必要である.
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