Japanese
English
薬剤
ATP製剤アデホスコーワの外科的応用—とくに人為低血圧法について
Surgical application of adenosin-triphosphate (ATP)
羽田野 茂
1
,
阿曾 弘一
1
,
広瀨 安光
1
,
鹿田 和夫
1
,
米倉 増男
1
,
福內 匡
1
Sigeru HATANO
1
1東京大学医学部木本外科
1Department of Surgical Clinic Tokyo Univ. School of Medicine
pp.859-863
発行日 1959年8月20日
Published Date 1959/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202448
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I.はじめに
Adenosintriphosphate(ATP)は,1929年Fiske & SubbarowおよびLohmannによつて同時に発見され,筋肉から始めて純粋な形で抽出されたもので,d-Riboseと結合したAdenineと3分子の燐酸とから成り立つている.このものは細胞内に普遍的に存在し,血液中にも1cc中0.5mg前後の割合で見出され,血液循環の調節と細胞の交易作用ならびに炭水化物,アミノ酸および脂肪等すべての代謝過程に対して生理学的に重要な役割を演じている.しかるに最近までその臨床的応用が一般に注目されなかつたのは,その製造が困難で比較的高価につき,できた製品も生体内では速やかに分解し易く,一部のATP塩は使用方法によつてシヨツク毒として作用することがある等の理由によるものであろう.
われわれはコーワ化学よりATP-Na製品(アデホスコーワ)の提供を受けたので,本剤の外科的応用として,人為低血圧および人為心搏停止に関する実験的研究を行い,その臨床的応用について若干の考察を加え,さらに最近2例のATPによる低血圧下心臓血管手術例を経験したのでここに報告し,御参考に供したいと思う.
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