特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
血液検査
凝固・線溶系検査
アンチトロンビン,トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)
海渡 健
1
1東京慈恵会医科大学附属病院中央検査部
pp.98-100
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104703
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
凝固経路が活性化されると,フィブリノゲン分解作用や強力な血小板凝集惹起作用を有するトロンビンが産生され,確固たる凝集塊が形成される.しかし,凝固による過度の血流障害が持続することは生体にとり好ましいものではないため,凝固を調節する機構も備わっている.その代表的なものが,多くの凝固因子活性を阻害するアンチトロンビンであり,従来はアンチトロンビンⅢと呼ばれていたが,最近では単にアンチトロンビン(antithrombin:AT)と呼ばれることが多い.
ATは肝臓で産生される蛋白質で,トロンビンの阻害が重要な作用であるが,生理的には活性化第X因子や第IX因子など,ほかのビタミンK依存性凝固因子も阻害する.そのため,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)のように何らかの原因で体内の凝固状態が亢進し,ATの消量が増加した場合や,先天性AT欠損症のようにATの産生が低下している場合に低下する.活性値として測定されることが多く,またATの増加には臨床的意義が少ない.
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