増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
2.検査の実際と症例の解釈
2)凝固検査
A.検査法
(14)トロンビン・アンチトロンビンIII複合体
朝倉 英策
1
1金沢大学医学部第3内科
pp.252-255
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906527
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■測定の意義
近年の凝固・線溶分子マーカーの開発は目覚ましいものがあり,臨床例においての凝固・線溶病態をより詳細かつ鋭敏に把握することが可能となりつつある.その中でも,トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(thrombin-antithrombin III complex;TAT)を臨床の場で広く測定しうるようになった点は特記すべきことの一つで,凝固活性化の程度を知るうえで極めて有用な情報を提供することになった.
トロンビンは凝固系カスケードの最後のプロテイナーゼ(proteinase)であるため,もし血中に生じたトロンビンの産生量を知ることができれば,凝固活性化の程度を明確にしうる.ただし,流血中のトロンビンは,早急にフィブリン,アンチトロンビンIII(ATIII),トロンボモジュリン,ヘパリンコファクターIIなどと結合して中和されて消失するので,直接これを測定することは不可能であった.TATの測定はこの問題点の解決策となり,血中でのトロンビン産生量を推定することが可能となった(図92).
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