Japanese
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綜説
頸部リンパ腺結核症の外科的手術療法の再検討
A new Critic on the Surgical Operative Treatment of Lymphadenitis Colli Tuberculosa
松下 良司
1
Ryoshi MATSUSHITA
1
1東京大学医学部木本外科
1TOKYO University, School of Medicine
pp.585-594
発行日 1955年9月20日
Published Date 1955/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201669
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頸部リンパ腺結核症の治療には放射線療法が最も効果的であるということが,今日では常識のようになつている.これはアメリカのWilliamsand Pusey(1902)によりリンパ腺結核のレ線照射療法が公表されて以来,多くの追試によりほゞ確立されたように見受けられている.
他方,本症の外科療法は,レ線療法登場以前には,本症に対する最も有力な治療法として一般に試みられていたものである.本邦における,この方面の歴史を回顧すると,明治36年(1903)の日本外科学会総会における鶴田禎次郎1),および佐藤進2)の両権威により行われた本症に関する宿題報告がある.本報告は本症に関する本邦における最初の総括的論述であつた.その席上,本症の治療法に関しては,両氏とも手術療法を最も主要な療法として,手術療法がそれ以前の全身療法や姑息的局所療法を遙かに凌ぐ成績をあげうるものであることを説いた.その報告後の討論において,当時の多くの権威が本症の手術療法の価値を認めた所論を述べている.しかし,それらの論述を全体として吟味すると,当時の手術療法には多くの危惧あるいは疑惑が含まれているように見受けられる.手術々式の選択や適応の決定について未解決の問題があるし,手術の直接死亡や術後粟粒結核の発生があること,術後再発率の高いこと,術後の瘢痕醜形や頸部の機能障害の残ることなど,いずれも手術療法に対する反論の要因となりうるものであつた.
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