心臓外科に関するシンポジウム
心疾患の臨床化学
松村 義寬
pp.276-277
発行日 1954年5月20日
Published Date 1954/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201426
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臨床化学的検査法を心疾患に応用して得た知見を要約すれば,酸素欠乏を中心とする種々の変化,循環障碍に基く肝腎肺等重要な諸臓器の機能不全に依る二次的の変化とであろう.直接酸素欠乏に由来する事象は血中酸素飽和度の減少でする.先天性心疾患の場合は代償的に血色素量の増大があるため,酸素含量としては正常値又はそれ以上を示す場合があるが,後天性の場合には,栄養障碍と相俟つて血色素量の減少が観察される事も少くない.チアノーゼは血中選元型ヘモグロビンの量が大約5g/dl以上になつた場合に認められると云われるが,先天性疾患の如く,総血色素量の増大せる場合は酸素飽和度の僅かな低下によつてもチアノーゼを発現するが,血色素量の低下せる場合は,酸素飽和度が著しく低下せる場合にもチアノーゼが発現しない事になる.
重要臓器の循環障碍に基因せる機能不全の症状として,肝機能障碍がBSPの排泄不全の形で証明され,又血中ビリルビン量の増大が認められる.ビリルビンは尚,増大した血色素量の代謝昂進にも由来するので,諸所の浮腫液中にも出現し,液を着色せしめる.之等に伴い尿中ウロビリン体排泄の増加が認められる.
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