綜説
縱隔腫瘍の外科—21自驗例に関る考察
葛西 森夫
1
,
中村 好和
1
Morio KASAI
1
,
Yoshikazu NAKAMURA
1
1東北大学医学部桂外科
1Dept. of Surgery Tohoku University
pp.569-576
発行日 1953年10月20日
Published Date 1953/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201314
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縱隔腫瘍は在来珍しい疾患とされ,我邦では手術された症例は少なかつた.良性腫瘍は後述する樣に,自覚症状を欠く者が可成りある爲に,自覚もされず放置されている場合があると思われる.近年集團檢診等の際に,胸部のレ線檢査が広く施行される樣になると共に,縱隔腫瘍の発見が増加し,稀有な疾患でなくなつて来た,一方胸部外科の進歩により,縱隔腫瘍の手術も段々安全に施行出来る樣になり,手術例も我が國で近年急激に増加した.此所に我が教室に於ける経驗例を基とし,我々の縱隔腫瘍に対する考えを述べ,縱隔腫瘍治療に資し度いと思う.
縱隔腫瘍は周知の如く病理組織学的に種々のものが含まれる.広い意味にとつて,縱隔内に或空間を占める病変をすべて縱隔腫瘍に含める人もいる.縱隔内に生ずる眞性腫瘍では,それによつて起る苦痛,症状,危險の全部又は大部分が他臟器又は組織を圧迫する事によつて生ずる.結核腫の如く,その症状の発現機轉が眞性腫瘍と殆んど同樣なものは,外科の立場から見て,縱隔腫瘍に含めて考える人もある.
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