最近の外國外科
手術不能の癌腫に因る疼痛を緩解するための脳下垂体移植,他
H. Gumrich
pp.153-154
発行日 1952年3月20日
Published Date 1952/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200999
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著者は約2年間に既に慢性疾患で劇甚な疼痛のある患者118名に仔牛の脳下垂体の移植をした経驗を持つている.この移植は仔牛が屠殺されてから30分間以内に実施されなければならない且つ脳下垂体を仔牛の頭から取り出す時にも保温状態でなければならないとしている.それは屠殺後約1時間を経た脳下垂体を移植した数例の場合には術後にプロランの分泄が証明出来なかつたことがあつたからである.即ちその移植が無効であつたことを意昧するものと考え得るからである.この報告は轉移のある癌腫のため劇しい疼痛を有する患者49名にこの移植手術を施した結果を述べている.この49名中9名は早期に死亡した.又3名に於ては移植脳下垂体は膿潰してしまつた.残りの37名中33名はその疼痛から死亡するまで或は生存している現在も免れている.それ等の患者の癌腫の種類は胃癌,直腸癌,気管枝癌,鼻咽腔部癌,乳癌,前立腺癌でホヂキン氏病も含まれている.
1例では3ヵ月間も移植が有効に作用した.又新しく移植を繰返せば矢張有効に働く.脳下垂体移植によつて疼痛が緩解されるばかりでなく,患者は治癒しつゝある様に感じる.食慾及び体重は増加する.2,3の例ではその生存期間も延長された様に見えた.この移植の効果が無くなる時には患者の衰弱が著明に現れて間も無く死亡する.4症例に於ては腫瘍の播種及び蔓延の進行が防がれた.脳下垂体移植は凡ての手術不能癌腫患者に施すべきものである.
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