紹介
色素沈着と下垂体,他
pp.274
発行日 1962年4月1日
Published Date 1962/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203248
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人および動物における色素の変化はホルモンと重要な関係を有する。妊娠,アジソン病,ときに慢性甲状腺機能亢進症,糖尿病において皮膚は暗色を呈し,甲状腺機能低下症においては淡色を呈する。思春期以後顔面は暗調を帯び,毛や眼の色も然りである。陰部および会陰は周囲より濃色となる。除睾者の皮膚のメラニンは正常より少ないが,カロチンは増量している。エストロゲン欠乏女子にエストロゲンを投与すると乳頭および陰部に色素沈着を来たす。去勢男子は,アンドロゲン療法を受けないと,紫外線によつて色素沈着を生じない。色素増減の機能に特に関係を有するものは下垂体であるとされる。疾患あるいは治療によつてこの腺が除かれると,皮膚の脱色素が起る。このことは下垂体から正常時に分泌されている色素産生ホルモンの欠乏による。このホルモンはmelanocyte-stimulating hormone (M.S.H.)といわれる。下等動物で下垂体を3葉有するものは(たとえば山羊,猫)中葉がM.S.H.を産生するが,人においては明らかな中葉を欠き,前葉の後部に分泌細胞が存在する。人にM.S.H,を投与すると皮層は暗色になる。これは全身的であるが,露出部に著しい。甲状腺機能低下症患者にその大量を投与すると色素沈着は2日以内に起り,投与を中止してから2週以内にもとの色調に返る。M.S.H.の作用はアジソン病においてよく認められる。
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