外科と生化学
その1
吉川 春壽
1
1東京大学生化学教室
pp.91
発行日 1951年2月20日
Published Date 1951/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200772
- 有料閲覧
- 文献概要
戰爭前までは生化学は外科にとつては大して重要な基礎学ではなく,生化学の詳しい事は内科の人には必要であるけれども,外科の人は知らなくてもすむような有樣であつた.ところが,最近にいたつて,外科領域で生化学に関する関心が急に高まつて,最近の外科学会総会の演題を見ても,生化学に関係のあるものが多数出されているし,外科の研究室に籍を置く若い人達が私の教室にもやつて来て仕事をしたりするようになつて来た.
これは一つには生化学を重く視るアメリカの医学が戰後の日本に大きく影響する状態になつたためもあろうが,アメリカにおいても,外科に生化学の知識が大きく使われるようになつたのは今度の戰爭がはじまる頃からであるらしい.戰傷とその治癒とが栄養によつて大きく左右されることや,輪血,輪液の問題が,このような気運をうながしたのだと思う.
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.