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糖中間代謝とホルモン
吉川 春壽
1
1東京大學
pp.44-50
発行日 1949年2月1日
Published Date 1949/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200151
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われわれの攝取する榮養素のうちで量的に云つて,もつとも多いのはいふまでもなく糖質である.ことに日本入は偏食といはれるほどに澱粉を多くとつてゐるので,攝取エネルギーの大半は澱粉のかたちであつて,それにひきくらべて脂肪ははなはだ少いのである.澱粉が食物の大きな部分を占めることについてはそれだけの理由があるので,澱粉は無限に地球上にそそがれる太陽のエネルギーを利用して植物が合成してくれるのであるから,最も豊富で安便なエネルギー源として利用され得るものだからである.われわれはこの澱粉を體内にとり入れ,それを消化器内で葡萄糖にまで分解してから吸收し,髄内で,あるひはそのまま燃燒して,そこに遊離するエネルギーを生命活動に利用し.あるひはそれを肝臓,筋肉その他の器官にグリコーゲンとして貯藏し,不斷の用に少しづつ使ひ,あるひは脂肪の形に變化して體内に貯蓄しておく.いづれにしても糖は終局的には髄内で分解しつつ,かつては植物がとり入れたところの太陽光線のエネルギーが形をかへて遊離して來て,さまざまの生理機能に利用されるのである.糖の中間代謝こそは生命現象の根源と關係あるものとしていちばん大切なことである.
糖の中間代謝については古くから研究がはじめられてゐたが,動物組織では筋肉が研究材料として最もよくしらべられ,植物界では酵母による醗酵現象が詳細な研究の對象とされてゐた.
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