展望
血漿蛋白質の化學的特性
吉川 春壽
1
1東大醫學部生化學教室
pp.19-22
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905436
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血漿蛋白質研究の最近の進歩はまことにめざましいものがあるが,これは何といつても戰時に必要とされた輸血の問題を解決するために多くの優秀な科學者が力をあはせて研究した結果であるとおもふ.ことにHarvard Medieal Schoolの物理化學教室のCohnはもう20年以上まへから血漿蛋白質の分別とその物理化學的特性に研究をすすめてきたが,Svedbergの超遠心法及びTiseliusの電氣泳動法の技術に助けられつつ大規模な血漿蛋白質の分劃精製を實驗し,戰爭中は米國赤十字によつてあつめられた血液について60報以上に達する研究を發表してゐる.
Cohn1)によれば18世紀にすでに血漿中のいろいろの蛋白質成分の特殊な化學的機能が認識されはじめたのである.William Hewson(1739-1774)は1771年に"An Experimental Inquiry into the Properties of Blood"といふ參考書に血漿からフイブリノゲンを分離することがのべてある.Cohnの引用するところを見ると,血液が凝固するとまもなく血清serumとsrassa-mentum血餅とにわかれ,crassamentumはさらに纖維性のgluten又の名coagulable lymphとred globules(赤血球)とからなつてゐることはよく知られてゐたものらしい.
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