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胃癌に對する胃亞全剔出の成績に就て
辻村 勇美
1
1九州大學醫學部第二外科教室
pp.304-309
発行日 1948年8月20日
Published Date 1948/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200351
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緒言
胃癌の根治は無論其の早期手術に存する事は今更改めて申述べる迄もないが,然し吾々が日常に遭遇するものには,遺憾ながら相當進行した晩期胃癌が尚多い状況である。友田教授は斯る症例中には胃全剔の適應症を見出し得る場合の少くないことを述べて,好成績を擧げられてゐる。教室の松尾は胃癌で試驗的開腹術や胃腸吻合術に終つた症例中,大體胃全剔の適應症に近い症例に就て其の遠隔成績を吟味し,又教室の鶴丸は胃全剔の遠隔成績を調査し,之等姑息的對症手術に比し良好なるものである事を明にしてゐる。
余は竝に當教室に於て大正8年より昭和20年12月末迄に胃癌に對し胃亞全剔(噴門下約3糎以内にて切除せられてゐるもの)の施されたものに就きて調査し其の統計的觀察に立脚して,胃全剔の夫れと比較檢討し,併せて,その胃切除標本の噴門側切除端の病理組織學的觀察を行ひ,局所々見では胃全剔の適應症と見做されながら,漫然と胃全剔を危險視せる爲に胃亞全剔に終つたものと考へられるものが少くないことを明にし,胃全剔の適應症に關する友田教授提唱の妥當性を證し得たので,茲に其の調査成績を報告し諸賢の批判を仰ぐ次第である。
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