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外科より觀た榮養失調症(第1報)—榮養低下と手術忍容力
大村 泰男
1,2
,
西山 信雄
1
,
上野 良太
1
,
鹽川 優一
3
1東京都養育院附屬醫院外科
2東大
3東京大學醫學部佐々内科
pp.181-183
発行日 1948年5月20日
Published Date 1948/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200321
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緒言
榮養失調症は戰時中及び戰後に注目された疾患であつて,特殊な收容所,或は孤島の生活者に多く見られ,日本内地に於ても程度の差こそあれ本症が現われて來た。内科方面では,つとに本症を注目し,その廣範な研究が共同研究の型に於て行はれてゐるが,外科領域ではまだまとまつた報告のあるを聞かない。榮養低下の場合,創傷治癒の遷延,化膿頻度の上昇,手術後經過の不良など,こゝ數年來外科臨牀にたづさわる者としては自ら充分に觀得されたことであつて,從つて榮養低下の外科領域に於ける影響に既に常識の範圍に在るとも言へるのであるが,これらの點に關して精細な,まとまつた報告には接してゐないために,私共は外科より觀た榮養失調症なる題目の下に各方面より之を探究しつゝあるのである。こゝに榮養低下と手術忍容力,つまり手術的負荷に對する個體忽容力と榮養状況との關係を第一報として報告したい。
手術は身體的負擔を大なり小なり伴ふものであることは云ふまでもない。その負擔に堪へる力は何を標準にして測定すべきか。文獻によれば循環器系統の状況,殊に心臓の機能を調査することが最も一般的であると述べられてゐる。順序正しい身體的動作,或は南側股動脈壓迫下に於ける運動による血壓,臍博数の變化を測定すること,又呼吸停止時間による判定,潜在性浮腫發生試験などが舉げられてゐる。然しながらこれらの試験も一面的な觀察であって,全身のあらゆる調査を綜合したもの,こそ,個々に當てはまる確實な所見であって,つまるところ臨林經驗が最も重視される可きだと謂ふ意見も充分理解される。
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