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膿胸のペニシリン胸腔内注入治驗例
水谷 洋二
1
1名古屋赤十字病院外科
pp.184-185
発行日 1948年5月20日
Published Date 1948/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200322
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I緒言
昨年末來名古屋赤十字病院外科に於て,名大田代先生指導のもとに,膿胸をペニシリン(以下「ペ」と略記す)胸腔内注入に依り,極めて効果的に治癒せしめ得たので茲に報告する次第である。
肺炎雙球菌性膿胸は勿論,葡萄状球菌,連鎖状球菌性膿胸に「ペ」溶解液を胸腔内に直接注入することは,Tillet等(1944)が初めて8例の肺炎雙球菌性膿胸に使用し,この内7例を外科的襲侵を加へることなく治癒せしめ得たことに初まり,Christie(1944)もその報告をなして居るが,當時の使用「ペ」量は餘りにも少量すぎるため,單に胸腔穿刺「ペ」胸腔内注入のみでは滿足すべき効果が見られなかつた。Poppeも同方法に依う,結論として,本症の「ペ」注入法は豫防的又は極く初期に於ては確かに有效であるが,既に完成した膿胸に於ては外科的に排膿を行はねばならぬと言つて居る。膿胸自身に對して「ペ」を筋肉内又は静脈内に注射しても,肋膜を通過して胸腔内に移行出現する「ペ「量の極めて僅かであることは既に實驗的にも證明されて居るところで,これに反して膿胸ある胸腔丙に「ペ」を直接注入すれば長時間に互り排泄せられずに膿汁中の病原菌に作用して奴果を擧げ得ることは確實である。
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