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最近に於ける義肢の動向—(その1)義足
水町 四郞
1
,
兒立 俊夫
2
1東京大學
2厚生團湯河原整形外科療養所醫務部
pp.169-174
発行日 1948年5月20日
Published Date 1948/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200318
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いとぐち
戰爭の間,我々は完全に眼かくしされた状熊であつた。國交が斷絶すると共に,諸外國の科學の動向といふものから完全に隔絶されて,その結果は戰爭中我々の行つて來た研究が果してよいものであるのかどうかも,わからずに數年の年月を經過してしまつた。未だ講和條約は結ばれないが,最近米軍の好意ある取計ひの結果,戰時中竝に戰後の科學研究の業績に接し得る様になつた。この機會に於て,我々の從來迄の研究業績を今一應再檢討し,今後の進むべき途を決あることが是非共必要であらう。
戰爭の悲慘なる部面は至るとこうに認められるが,戰爭の犠牲者として,四肢を切斷されたものも數萬を超える數に達してゐる。産業が機械化され,交通機關の高速度化に伴つて,産業又は交通災害者として,四肢を切斷されるものゝ數は増加はして來てゐるが,決して戰爭によつて生みだされる四肢切斷者の數に比すれば,實に微々たるものである。このため戰爭の間我が國に於ても義肢は著しい進歩をとげたが,諸外國に於ても夫々優秀な研究が遂げられてゐる。幸にも我々は米國製全遊動義足の實物を見る機會に惠まれたので,これをよい參考にして,數ケ月來研究に從事したので,以下,それを基礎として,我々が抱いてゐる今後の義肢の動向について記述して見ようと思ふ。
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