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胃・十二指腸潰瘍の廣汎胃切除術が優秀なる治療成續と殆んど零に等しい死亡率を擧げて居る現在,この術式が胃・十二指腸潰瘍の外科的療法として最も秀れた術式と考へるには先ず異論のない所である。然るに,1943年シカゴ大學のDragstedt教授は胃・十二指腸潰瘍に對して胃迷走神經切斷術(アメリカに於ては,Vagotomy胃迷走神經切斷術resection of Vagus nerve迷走神經切除術又はgastric neure-ctomy胃神經切除術と云はれるが,Vagotomyが最も多く用ひられて居る)を行ふ事により,これを治癒せしめ得る事を發表した。爾來,アメリカに於ては多數の外科醫によつて,この治療法に關する實驗的竝びに臨牀的研究が行はれ,今日に於てはVagotomyの胃・十二指腸潰瘍に對する治療的效果がその多數の外科醫によつて認められつゝある傾向に至つて居る。從つて,今後吾々が胃・十二指腸潰瘍を外科的に治療する場合,このVagotomyと從來行はれて来た廣汎胃切除術とに關して種々の比較考察が必要となつてくるが,その中Vagotomyは胃・十二指腸潰瘍に對する治療法として胃切除術におきかへられる程優秀なる術式なるか,又Vagotomyは胃・十二指腸潰瘍の如何なる状態に對して適應となるか等の問題に就ては特に關心が拂れるものと思ふ。
然し乍ら,胃・十二指腸潰瘍の外科的療法としてVagotomyが行はれてから僅々3,4年の經過に過ぎないので,その遠隔成績が不明である現在では,これが適應を決定的にする事は不可能であるが,アメリカに於ける多くの外科醫の多數の經驗を基礎とせる報告を綜合考察して,胃切除術とVagotomyとの關係に就いて聊か論及して見たいと思ふ。
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