原著
自律神經遮斷劑と流早産
淸水 直太郞
1
1佐世保共濟病院産婦人科
pp.69-71
発行日 1954年2月10日
Published Date 1954/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200979
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終戰後の8年間を回想してみると醫藥の進歩は眞に驚く程で,中でもズルフアミン劑と抗生物質とは特に全醫界に影響する處が極めて大であり,實地醫家はそれに伴う治療法の改變,工夫に忙殺されている。消化性潰瘍の治療藥,就中,自律神經遮斷劑亦,テトラエチル・アンモニウム鹽(TEA鹽),以後醒しい變遷を遂げ,プランタール,バンサイン,ヘキナメソニウム,アバカン,ベンチル等が合成された。この後2者は他と異なりアトロピン樣作用(向神經性作用)と共にパパペリン樣作用(向筋性作用)を共有し1つの藥劑で2作用が兼ねられるし,而もアトロピン樣の口渇,瞳孔散大等の副作用が極めて輕く,又その毒性も少ないし(心臓に對する毒性はアバカンではアトロピンの1/100),パパベリン樣の中樞神經麻痺作用は殆んどなく,從つて習慣性になる虞もなく,理想に合つた鎭静劑で,アバカンは注射藥,ベンチルは内服藥(10mg入りカプセル)である。
文献によればアバカンは1930年Brockにより合成され,胃及び十二指腸潰瘍,慢性腸炎,慢性膽嚢炎による疼痛を始め狹心症による疼痛亦確實に輕快せしめ,本態性高血壓症に對しては最高血壓を15-25mm水銀柱低下して鎭静せしめて居り,副作用は筋肉内に25-30mg (靜脈内に20-25mg)を用いた場合の少數に一過性(10-20分)の視力障碍,喉頭の乾燥感をみたのみである。
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