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昭和9年協同研究者櫻澤は高血壓症と頸動脈洞および大動脈神經反射とについて日本内科學會に宿題報告をした。その後も引きつづいて,この方面の研究に從事しているが,頸動脈體もその目的の一つである。頸動脈體の機能については,現在のところ反射感受體であるということ以外はまだ確證しえないので,私たちは體といつている。頸動脈洞反射は洞壁からも,頸動脈體からも出ると考えられている。ただし,今日の知見では洞壁反射と頸動脈體反射とをはつきり區別しにくいのであるから,私たちは普通,頸動脈洞反射とよんでいる。
頸動脈洞反射の研究の初めから,この反射が洞壁から出るか,頸動脈體から出るかについては,議論があつた。H. E. Heringが頸動脈洞反射を完全に記載した翌年,Drüner(1924)は,頸動脈體がHering反射の出發個所であり,血壓の感受體であると同時に,血液の化學成分の變化にも應じる化學性感受體であろうとのべた。1925年,Heriugは本小體を血壓感受體と見ることの根據について檢討して,Drünerの推論を否定した。形態學者de Castro(1926)の考えかたにしたがつで,Jacobovici,Nitzescu,Pop(1928)も頸動脈體をHering反射の源とした。これらの人たちは,いずれも外科醫であつたので,手術例について實驗している。かように人體の頸動脈體を刺戟したり,剔出したりすることは今から20數年も前から行われている。私たちがこの研究に手をつけはじめたころ,呉先生はHeringのこの批判を話して下さつた。Heringは先生の留學先きの指導者であつた。Heringは生理畑の人であるから,私たちが形態學的にDrüner,Jacoboviciらの業績を檢討するようにいわれた。私たちは,まず舌咽神經頸動脈枝だけを切ろうとした。總頸動脈分岐部のあたりでは到底,頸動脈枝を切りつくすことができないことを見て,舌咽神經幹から頸動脈枝の分岐する状態をしらべた。その結果,犬猫・家兎では舌咽神經幹が頸靜脈孔から出て,まず分れる第一枝,またはそれと第二枝が普通,頸動脈技となることを知つた。また迷走,頸部交感,ときには舌下神經からも分枝が來て,頸動脈洞神經叢をつくる。
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