症例報告
人工肛門を造設した下行結腸部に於て其他の全腸管の嵌頓を來した1例
澁澤 喜守雄
1
1東京帝國大學醫學部都築外科教室
pp.42-44
発行日 1947年4月25日
Published Date 1947/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200205
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題名の意味は下行結腸腸間膜に裂孔があつて,此の裂孔から全腸管が内嵌頓を惹起したと言ふ事で,内嵌頓は外科醫には常識的であるが,此の樣な異常の嵌頓の誘因として多くの先天的異常が擧げられる所に興味があるといへる症例である。
患者は11歳,榮養の甚だ低下した男兒。幼時から腹部膨滿が著しく,便秘がちで,1週間位秘結する事は屡々であつた。時々蛔蟲を排泄した。昭和20年11月始,生地茨城縣某村から父親の金品を盜んで上京,11月14日上野驛に着いたが食物と宿舎とに窮した。上野淺草界隈の街頭市場で種々の食料を盜んで食ひ,戰災孤兒と詐稱して此が收容に當つてゐる淺草某寺に入所投宿した。入浴の時在宿中の先輩孤兒等から腹部の膨大な事を嗤はれた。夕食に藷,粉食を攝つたが18時頃から腹部膨滿が増惡し,兩側腹に疼痛が強く,ガス排出がなくなり,惡心,呼吸逼迫を訴へるに到つて,急病患者として同輩に擔がれて當院を訪れた。
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