How to start up 縦隔鏡下食道亜全摘・1【新連載】
準備編:機材,配置,デバイス,頸部解剖
森 和彦
1
,
瀬戸 泰之
2
Kazuhiko MORI
1
1三井記念病院消化器外科
2東京大学医学部附属病院胃食道外科
pp.88-93
発行日 2022年1月20日
Published Date 2022/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213598
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連載を始めるにあたり
縦隔鏡下食道悪性腫瘍手術が本邦の保険術式となり,2022年1月の時点で4年弱ということになる.さらに遡る2011年11月,筆者らは東京大学医学部附属病院における自主臨床試験として,非開胸食道癌手術の経裂孔縦隔操作にdaVinci Surgical System Sを導入した.同術式において腹部から届かない上縦隔には頸部アプローチを適用し,気管分岐部までのリンパ節郭清と食道授動を鏡視下に達成するための工夫を進めたのが,筆者らの頸部縦隔鏡食道手術である.いうなれば,da Vinciが主人公の自主臨床試験の副産物である.
術者と前立ちにしか術野が見えなかった開胸での食道手術において,若手外科医に前立ちや執刀の機会を与えたのは鏡視下手術であるというのは,いまさら述べることではない.しかし,縦隔鏡下食道亜全摘は「見える化」という点で胸腔鏡手術を凌駕するといっても過言ではない.縦隔鏡では視線の方向が食道周囲を取り巻く筋膜の平面構造に沿っているため,切除側と温存側の境界の認識が得やすく,またデバイスの操作軸が常に剝離方向と平行になるので,手技的な障壁は存外に低い.空間的な制限から3ポートでの手術が基本となり自由度がない分,手術手技が定型化しやすいということもできる.
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