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胆摘のみの立場から
膵・胆管合流異常では,逆流した膵液が胆汁と混和することにより惹起される持続性の慢性炎症が発癌の原因であることが推測されている.しかし,このような慢性炎症が長期持続するためには,膵液と混和した胆汁が胆道内に一定時間停滞する必要があり,胆管非拡張型の場合は胆管ではなく胆囊に高率に癌が発生するものと考えられる.自験例の胆管非拡張型44例の検討では,胆管癌の合併は1例もなく,胆囊癌や膵癌を合併していなかった19例の胆囊摘出後平均9.3±4.7年の経過観察中に胆管癌の発生は1例も認めなかった.
以上の結果よりわれわれは,胆管非拡張型膵・胆管合流異常に対して肝外胆管切除は不要と判断し,胆囊摘出術のみを行っている.膵・胆管合流異常では診断されていない症例も多数存在するため,診断技術の進歩による症例の拾い上げや蓄積が必要であり,それらを再検討していくことで,エビデンスに基づいた治療方針の統一が望まれる.
分流手術の立場から
①「分流手術」を選択するメリット
日本膵・胆管合流異常研究会からの報告では,胆道癌の合併頻度は非拡張型・成人が42.4%であり,人口動態統計を考慮すると約3,000倍の高危険率となる.合流異常における胆道粘膜上皮遺伝子発現においては,K-ras遺伝子・p53遺伝子異常が報告され,合流異常における胆道粘膜上皮は胆囊・胆管ともに癌発生母地であると考えられる.
②デメリットとそれに対する対処法・考え方
分流手術の術後合併症には縫合不全があり,炎症が持続している状態での手術施行は吻合部狭窄のリスクにも関与する.肝内結石は吻合部狭窄や肝内胆管狭窄における反復する感染により発生し,その解決のために肝切除を選択することも考慮される.
また,分流手術後にも遺残胆管での発癌の可能性,あるいは肝内胆管での発癌の可能性は残り,手術手技の工夫・術後長期にわたるフォローアップが必要である.
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