1200字通信・56
ケモと緩和ケアの功罪
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.1019
発行日 2013年9月20日
Published Date 2013/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104730
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平成18年6月のがん対策基本法制定以来,各地のがん診療連携拠点病院を中心に緩和ケア研修会が行われています.こうした研修会では,緩和ケアは化学療法などの開始当初から併行して行われるべきであることが強調されていますし,患者さんに対してだけではなく,ご家族のグリーフケアも含めたメンタルケアについての項目も盛り込まれています.しかし,その実践はなかなか難しいようで,研修会を行う側のがん診療連携拠点病院の先生や,熱心に緩和ケアを行っておられる先生に,驚かされることや困惑させられることも増えてきています.
ある地域で有名ながん診療連携拠点病院の先生ですが,癌の術後化学療法を熱心に行っていたものの,治療効果がなくなった途端,「もう来なくていいから」の一言.質問しようとする家族に,「二度言わせないでください」と言い残して部屋を出て行かれたそうです.この患者さんは,化学療法をしている間,痛みに対しての処置は全く受けておられず,担当の先生はがん診療連携拠点病院の医師でありながら,緩和ケアの研修会を受講しておられなかったようです.結局,最期のお世話をすることになったのですが,このようなケースを何例も経験しており,単に担当した医師個人に問題があるだけではないのではないかと思い始めています.
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